乃木坂は幽霊坂 徒然とおるの建築まち歩き

季刊誌『かきのたね』で連載している「徒然とおる」から。徒然とおるのまち歩きをおたのしみください。

乃木會舘

乃木坂は幽霊坂

東京は坂の街です。まち歩きの集合は駅になりますが、ほぼ低地に駅があり坂を上って散策が始まります。ちなみに東京23区内には名のついた坂道がおおよそ900あるそうです。驚きです。

江戸開府当時、神田山を切り崩して埋め立て日比谷が出来ています。ChatGPTに東京の代表的な坂を3つ上げてもらいました。1靖国通りの坂「甲州街道坂」、2麻布十番の坂「赤城坂」、3吉祥寺の坂「中道坂」だそうです。(23区内と質問したのに?)

さて、今回は乃木坂界隈を散策です。これまで何度も乃木坂駅を利用していたのですが、坂を上りきる手前にあのジャニーズ事務所のビルが建っているのに全く気付いていませんでした。この坂の旧名は「幽霊坂」で、乃木大将の殉死された大正元年9月までそう呼ばれていました。今は、東京を代表する賑わいの街で、旧防衛庁跡地に東京ミッドタウン、国立新美術館(黒川紀章2006)が再開発されています。

乃木神社・本殿

駅を出て坂を下っていくと鳥居が現れます。乃木大将を祭った乃木神社です。本殿と列柱バルコニーがイタリヤの古い市庁舎を思わせる乃木会館ファサードは、亀戸の香取神社や国立能楽堂の設計者、建築家大江宏の作品です。本殿は、数寄屋建築を思わせる意匠で本殿前に能舞台のようなスペースが見られました。プロポーションが美しい建物でした。境内にはほかに、敷地の高低差を生かした地下1階地上2階のドイツ下見板張りの木造洋館(旧乃木邸1902)と煉瓦造りの馬小屋、木造の守衛所とあります。洋館は黒塗りの板張りで飾り気のない質素な建築で一般公開時のみ見学可能のようです。

旧乃木邸

ミッドタウンに隣接した緑陰に覆われた坂倉準三のアトリエ前を通り、ミッドタウン敷地内にある、鋭さ、平坦を狙って外壁に鉄板を使った21-21デザインサイト(安藤忠雄2007)を眺め、最後に、ミッドタウンの公開空地の緑地帯で癒されたまち歩きでした。
(Text. 鈴木工務店代表/ 鈴木亨:一級建築士)

坂倉建築研究所

21-21デザインサイト