揺れる時代に、変わらない家づくりを

世界情勢の不安定さは、遠い国の出来事にとどまらず、私たちの足元の暮らしにまで確実に影を落とし始めています。いま起きているイランを巡る緊張は、エネルギー価格の高騰や物流の混乱を通じて、建築業界にも大きな影響を及ぼしています。木材や断熱材、設備機器に至るまで、価格は日々変動し、これまでのように「見積もり通りに進む」こと自体が難しい時代に入りました。加えて、資材の納期遅延や供給停止といった事態も現実のものとなり、現場は常に不確実性と隣り合わせです。数年前には、ウッドショックがおきました。輸入材不足で国産材も不足に落ちいりました。いまのところは落ち着いていますが、欧州からも多くの木材がスエズ運河、紅海経由で輸入されています。

こうした中で、私たちは「待つ」のではなく、「動く」ことを選びます。できるだけ早い段階での発注、複数ルートの確保、代替案の準備など、先手を打つことでリスクを最小限に抑える努力を続けています。しかしそれでも、急激な価格改定の連絡が入るたびに、計画の再調整を余儀なくされる場面も少なくありません。正直に申し上げれば、手に余ると感じる瞬間もあります。

それでもなお、私たちは立ち止まるわけにはいきません。家づくりは、お客様の人生に深く関わる仕事であり、「今だからできない」と簡単に引き下がるわけにはいかないのです。大切なのは、この不安定な時代においても、何を守るべきかを見失わないこと。性能や品質はもちろんのこと、住まい手の安心や信頼を損なわないことが、私たちの最も重要な責任です。

だからこそ、これまで以上に丁寧な説明と対話を心がけています。価格の変動や納期の見通しについても、できる限り透明性を持ってお伝えし、お客様と同じ方向を向いて進んでいく。その積み重ねが、結果として最善の家づくりにつながると信じています。

時代がどれほど揺らごうとも、私たちの仕事の本質は変わりません。一棟一棟に向き合い、誠実に、着実に形にしていくこと。困難な状況の中だからこそ、工務店の真価が問われているのだと思います。今できる最善を尽くしながら、この局面をしなやかに乗り越えていきたいと考えています。

この記事の監修者

鈴木 亨

会長

鈴木 亨

Suzuki Toru

一級建築士

大学卒業後にイギリス、フランスで約5年間暮らしました。その間、ERNO GOLDFINGER設計事務所、RSRP設計事務所に勤務しました。欧州と日本の二つの原風景から、残したくなる「普通の家」を創るたのしさを知りました。好きな言葉は「桃李不言 下自成蹊」。