アート巡り 思考する時 徒然とおるの建築まち歩き

季刊誌『かきのたね』で連載している「徒然とおる」から。徒然とおるのまち歩きをおたのしみください。

地中図書館1

「フィンランド・グラスアート輝きと彩りのモダンデザイン」展が、白金の旧朝香宮邸(東京都庭園美術館)で開催されていました。一点物の作品を思い浮かべていましたが、フィンランドではほとんどの製品が今でも再生産されています。建築家アルヴァ・アアルトのアイコン的作品1937年作花器「サヴォイ」は54年からイッタラ・ガラス製作所で生産が続いています。

アルヴァ・アアルト花器「サヴォイ」

九十九里にあるSghr(菅原工芸硝子)にも出かけました。併設のミュージアムショップでグラスカップが気に入り購入。Sghrは創業35年で、ガラスの「美しい表情」を追い求めるデザイナーと職人のハンドメイドグラスを創造する老舗メーカーです。ゆったりした敷地に点在する白い建物の一つがレストランで、新鮮な素材を料理したランチを個性のあるガラスの器でいただきました。その隣はガラスの品々が映える明るいショップで、ランチを終えた人たちで賑わっていました。

Sghrレストラン

Sghrミュージアムショップ

木更津の「農と食、アートと自然。いのちのてざわり」KURKKU FIELDS(クルックフィールズ)に昨年オープンした「地中図書館」まで足を延ばしました。この図書館は、丘に隠れて建物は見えないのです。まさに「大地の一部のような非オブジェクト的」な建築でしょうか。入館に必要な予約をしたつもりが忘れていたようで建物内には入れずじまいでした。規模は違いますが、ヘルシンキ中心部に建つテンペリアウキオ教会(石の教会/内壁が巨大な岩肌むき出しで鋼板の円盤ドームを載せ、ガラスのトップライトから自然光が射す)と、ガウディのコロニア・グエル教会を思い出していました。

ガラス越しに室内を覗き見。古代の竪穴式住居の屋根に土を被せた洞窟で「思考する時」をたのしむ場のようです。再度、出かけます!
(Text. 鈴木工務店代表/ 鈴木亨:一級建築士)

地中図書館2