
写真右/杉板張りと白い外壁がコントラストをなす外観。水平の玄関庇が駐車場まで伸びる。 写真左/個室群を配した2階からリビング吹抜けを見下ろす。
大人のシェアハウス的二世帯住宅
建替えによる、両親と娘夫婦の住まいです。ゆうに30年を超えていた建物は、当時、鈴木工務店が手掛けた家でした。そのご縁もあって、今回二度目の建築です。
「子供の頃に慣れ親しんだ家ですし、はじめはリノベーションも検討しました」と話す娘のSさん。ただ、当時と現代の建物性能には開きがあることや、何より暮らし方が異なるため、最終的には建替えを選択しました。

オープンなキッチンとダイニングエリアは造作収納ですっきりと。変形のダイニングテーブルはTECTAの「M21」
既に生活リズムが出来上がっている大人4人の家は、いわゆる二世帯住宅というより、個の時間も集う時間も大切にできる、居心地のいいシェアハウス的な雰囲気です。
「家族皆、自己主張が強いタイプではないので、誰かの声掛けで集まるというより、自然と皆が集まるオープンなLDKにしたいと思いました」とご主人のDさんは話します。

リビング吹抜けに間仕切りを兼ねる階段をレイアウト。階段下に愛犬フクちゃんのお部屋をつくりました。
家の構成は、1階にワンルーム状のLDKとお母様の個室、洗面室を配置しています。家の中央に配したリビングは上部に吹抜けがあり、庭とデッキにつながる開放的な空間です。この吹抜けを挟んで2階にお父様の個室と子世帯の個室、仕事部屋、水まわりがあります。娘さん夫婦の部屋は、主寝室に小さなラウンジのような空間を備えていて、二人でグラスを傾けるなど、くつろいだ時間を過ごすこともできます。

娘さん夫婦個室の一画に設えたラウンジコーナー。お二人でゆっくり過ごす時間も育める。
暮らしながらつくる、我が家のリズム
「計画当時はコロナ禍で在宅ワークが中心だったため、仕事部屋を確保して、キッチンには皆で作業ができるゆとりを求めました。でも今は出社回帰でリモートは週に1回程度に。もっと料理や庭を充実させる時間をつくっていきたいなと思っています」とSさん。それでも、休日はご両親も含め家族で食宅を囲んだり、デッキでヨガを楽しんだりと、充実の日々を過ごしています。

娘さん夫婦の個室エリアは、仕事部屋と寝室、ラウンジコーナー、キャットウォークに出られる扉、衣類のほか布団やスーツケースを収納できる納戸も備えています。
ダイニングカウンターにはご主人の趣味であるウィスキーが。皆で会話と共にゆっくり味わう時間を大切にしています。一方、平日の昼間はご両親がリビングでのんびり過ごしているそうです。娘さん夫婦の働き方は、建築計画時と少し想定が異なりましたが、どの時間も空間も家族が余すことなく活用している様子です。

天井は床と同じモミ材の浮造り仕上げ。壁はドイツ製の壁紙ルナファーザーで、ほんのわずかグレー味のかかった白で塗装。
また、断熱・気密性能が格段に向上した住まいに「以前より風邪をひきにくくなったみたい」とお母様。ダクト式エアコン1台で家全体を冷暖房していますが、鈴木工務店の定期点検時にダクトの向きや吹き出し口の調節を重ね、2年目は各室安定した室温が保たれています。

写真右/自転車や愛犬のお散歩グッズが収まる籠など、日常の楽しさが溢れる玄関。 写真左/リビングに隣り合うお母様の個室。間仕切り壁には防音目的で断熱材を施しています。
これまで都心のマンションに暮らしていたご夫婦に、皆で一緒に住むことの感想を伺ったところ、「この先、歳を重ねていく親をそばで見守れる安心が大きいです。実際の生活はお互いに話しながら工夫していますよ」とのこと。たとえば音の問題。夜帰宅するご夫婦の生活音対策として、ご両親個室の内壁に断熱材を入れていますが、住んでみると朝早く起床するご両親の活動音の影響が大きいことが分かりました。

2階吹抜まわり。キャットウィークには筋トレが趣味のご主人用懸垂が。吹抜け手摺(腰壁)を書棚に利用。通路に面してトイレ、洗面室と浴室が並ぶ。
そこで、朝はリビングでテレビをつける時間を決めるなど、緩やかな決まり事もつくっています。住み始めてからすり合わせることもありますが、暮らし方で解決し、集う安心と心地よさを享受している様子がうかがえます。

南の庭。百日紅は既存を残し、グランドカバーはクラピアを繁殖させてドッグランとしても活用。
TIPS
◆生活音対策は両世帯に
ご両親の個室(内壁に防音効果もある断熱材セルロースファイバーを充填)だけでなく、子世帯の内壁や扉にもはじめから防音の工夫があるとよい。
◆収納に合わせた物量に
造作収納は物量を考えて計画。今ある物すべてを入れるのではなく、入り切らない物は思い切って処分する好機と考える。二世帯の場合ご両親の物が多い傾向に。家族皆で協力して片付けよう。
◆エアコン計画をより快適に実行するには
設計で想定した冷暖房の計画(ここではダクト式)は、住み始めてから小まめに微調整するとより快適に。工務店の定期点検前に体感や要望を伝えておこう。
【建築概要】
竣工:2023年
敷地面積:223.60㎡(約68坪)
延床面積:123.98㎡(約38坪)
photo: Chika Suzuki
text : 鈴木工務店