徒然とおる 『雅なる地』青山まちあるき~かきのたねvol.59秋号より

明治記念館 車寄せ

九月に入っても猛暑が続くなか、信濃町駅から歴史建築を巡る「青山まち歩き」を始めました。出発点の明治記念館は、明治14年に「赤坂仮皇居御会食所」として建てられ、明治憲法制定など外交の舞台となった由緒ある建物です。設計は大棟梁・木子清敬。唐破風屋根を備えた馬車寄せや真壁造り、和洋折衷の内部意匠は、近代日本が洋式生活へ移りゆく姿を映しています。戦後に移築され、現在は「明治記念館」として一般公開され、結婚式や宴会の場として利用されています。

神宮の銀杏並木

記念館を後に聖徳記念絵画館から銀杏並木へ進むと、かつての陸軍練兵場と女子学習院を左右に配した軸線的都市空間が広がります。これは権力や理念を空間で示すバロック的都市構想の一例で、絵画館の前は広い芝生の空間になっており、パリの凱旋門を思わせます。銀杏並木は都と神宮で管理を分担し、車道側は都の管理で一メートル低く樹高を抑えて景観を整えているそうで、成長した樹木の景観が素晴らしい空間です。都市デザインの歴史を感じさせます。

都営青山一丁目アパート

さらに青山通りを赤坂に向かって進むと、バルコニーが特徴のホンダ青山ビル(1985)、新青山ビルの裏手に都営青山一丁目町アパート(1950)6号棟が生き残っています。丹下健三設計の草月会館(1977)とイサムノグチの石庭、内藤博設計の虎屋赤坂店(2018)など、戦後から現代にかけての建築が楽しめました。最後に山脇学園の江戸大名屋敷の長屋門(重要文化財)を見みながら、江戸から明治、戦後、現代へと重層する歴史の歩みを体感しながら赤坂駅へ。TBSの向かいにある「相模屋」(先祖が相模の出身とのこと)で「水ようかん」を土産にしました。

草月会館 イサムノグチの石庭「天国」

虎屋赤坂店

長屋門

この記事の著者

鈴木 亨

会長

鈴木 亨

Suzuki Toru

一級建築士

大学卒業後にイギリス、フランスで約5年間暮らしました。その間、ERNO GOLDFINGER設計事務所、RSRP設計事務所に勤務しました。欧州と日本の二つの原風景から、残したくなる「普通の家」を創るたのしさを知りました。好きな言葉は「桃李不言 下自成蹊」。