窓と風

フリーペーパー『MY TOWN』連載コラム2017.05から。「窓と風」をテーマに切り取っています。外出自粛の今だからこそ、自宅で感じられる四季の移ろいや景色を大切にしたいです。

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 1年で最も気持ちの良い季節、5月を迎えました。窓から、庭に咲く色とりどりの花や、日に日に緑の濃さを増す新緑が風に揺れているのを鑑賞するだけでも気持ちが上向いてきます。「窓」は、採光、通風と眺望のための開口部。照明に頼らずに自然光で明るい室内を確保し、爽やかな空気で室内の換気をする役割があります。そして、眺望。庭先の風景を切り取り目を楽しませてくれる窓は、まさに額縁です。

 インド・デリーの南西約260km に位置し、ピンク色の建物が並ぶジャイプールは「ピンクシティ」と呼ばれ、1799年にマハラジャのシティ・パレスとして建てられた、ピンク砂岩の「ハワ・マハル(風の宮殿)」がシンボル。通りに面した外壁の953の小窓から、宮廷の女性たちは姿を見られることなく街の景色を楽しんだそうです。その無数の窓を抜ける風と幻想的な風景が、旅の疲れを忘れさせてくれました。

 同じような体験を日本国内でもしたことがあります。「美しいものに感動する心」を表現した日本庭園と、横山大観をはじめとした日本画を鑑賞できる島根県安来の足立美術館。壁の開口部が額縁となった小空間からみる庭園の景色は、一幅の絵画のようです。外と内が一体となるこの場所で、自然との「間(ま)」に身を置くことで感じる何かがありました。皆さんも外へ窓を大きく開けて、薫風を含む自然と一体になってみてはいかがしょうか。 (鈴木)