仕上げが映す光と影の関係を考える

間柱が露になる真壁のつくり。壁は調湿作用のあるモイス

壁や天井の仕上げを何にするか、悩むのも家づくりの楽しみのひとつかもしれません。
ちなみに、鈴木工務店ではルナファーザー(ドイツ製の天然紙と木製チップによる)の白系塗装が多いです。部分的に合板の目透かし張りや、無垢板積層パネルを仕上げに用いることもあります。

できるだけシンプルなもの、仕上げで躯体を隠すのではなく、素材の特性が生きるものをそのまま仕上げに使う、そんなイメージです。

とはいえ、悩める方に選択のポイントをひとつご紹介します。

【仕上げが映す光と影の関係を考える】

ルナファーザーの上からブルーグレーのペイントを施しました。上塗りは8~10回耐えられます

ルナファーザーの場合

前述したルナファーザーは、平滑であってもチップが漉き込んであればなおさら、陰影のある表情を見せます。それは、素材のもつやわらかな質感のためです。ちなみに、ビニールクロスとは違って静電気が起きにくく、部屋の入隅や給気口まわりでもホコリがつきにくいのもうれしい特徴です。

モイスの場合

現在進行中の玉川学園の家「自然にくらす」では、モイス(天然の粘土鉱物/石灰等が主原料で土に還ることが可能)で壁を仕上げています。多孔質で淡いグレーの壁面は、光と影を静かに映し、空間全体に心地よい落ち着きをもたらしてくれます。調湿作用のほかに、遮音性などにも優れています。

北窓からの淡い光がモイスの壁面を伝う階段。床はまだ養生のままです・・・

逆に、プリント合板や鏡面仕上げのパネルなど新建材のつるっとした素材だと、光を反射し影は目立たなくなります。結果的に、どこも一様に明かるい均質な空間になります。ちなみに、鈴木工務店ではキッチンパネルなど必要最小限の箇所にしか仕上げの新建材は使用しません。ビニールクロスも住宅ではほとんど使いません。

壁の面だけではなく、空間全体の奥行感も考えよう

結果、仕上げと光、影の関係は、自然系の素材がもつ質感に見て取れることがわかります。素材のもつ凹凸や肌理を光が拾い、影をつくるのです。小さな家でも、壁に写る光と陰から空間の奥行を感じることができます。一様に明るければ、空間の大きさに体感の変化は得られないでしょう。仕上げを選ぶときは、壁の面だけではなく、光と影、空間全体の奥行や広がりも考えてみましょう。

さて、上記写真3点は、「自然にくらす」の現場からのチラ見せカットです。実際の空間は、ぜひ建物完成見学会でお確かめください。今回の家は、コンパクトながら、住まい手の要望を盛り込んだ空間になっています。瞑想室など、籠れる空間もあり。畑のある広い敷地に、あえてひっそりとたたずむ静かな雰囲気を醸していますよ。見学会へのお問い合わせはこちらから。(畑野)