パッシブ的住まいの楽しみ方

季刊誌『かきのたね』のバックナンバー(vol.47、2022年夏号)から。住まいと暮らしのヒントを紹介。今回は、四季を感じる家での日射遮蔽や取得、断熱についてお話しします。

四季の移ろいを感じる暮らし

東京の冬の南中高度はおおよ31度と低く、障害物がなければ家の奥まで日射が届きます。そして、夏至に向かって太陽はだんだん高い軌道を通り、日光の入射範囲は狭くなります。

暖かい春の陽を受けて活動的になり、夏の強すぎる日射は庭の広葉樹等で遮り、小春日和の秋冬は陽だまりを求めて縁側でくつろぐなど。元来、私たちは、自然の陽の移ろいに呼応しながら住まい廻りや暮らしを調節してきました。

そうした、四季を感じる暮らしをたのしむにも、「気密」「断熱」そして「換気」は重要です。

高気密・高断熱こそ、冬は貯めて、夏は遮る

隙間が多く気密のあまい家は、床下から天井へと壁体内を空気が自由に移動しています。中古住宅や築年数の経った家のリノベーションを行うときには、そうした隙間に「気流止め」(下写真)の改修工事をすることがあります。いわゆる「隙間風」を退治することで気密を高めていきます。

窓辺には蓄熱できる素材を仕上げに用いることも。床や壁の仕上げの一部に、蓄熱量のあるタイル(下写真・団地リノベK邸)を用いるのも効果的です。水に強いタイルは観葉植物を置く場所としても重宝し、水やりと蒸散で加湿も期待できます。
また下の写真は、団地リノベーション計画。共用部に該当するアルミサッシには手を付けず(つけられず)、木製の内窓を設置しました。

こうした工夫で、暖房の開始時期を遅らせたり、終了時期を早めたりすることも可能です。

断熱・遮熱--後付けできる設備の工夫も

より手軽な断熱の工夫としては、「ハニカム・サーモスクリーン」(下写真・展示館)がおすすめです。窓のブラインドとして取り付けることで、ハニカム(ハチの巣)構造のスクリーンが空気層をつくり断熱効果を発揮します。生地にポリエステル不織布を採用しているので、和紙のような風合いの柔らかな採光も得られます。

一方、遮熱は窓の外側で処理をするのが一番です。気密・断熱性能の高い家はよく魔法瓶に例えられますが、ひとたび日射が入ると熱が逃げず、室内温度はどんどん高くなってしまいます。冬は存分に取り入れたい日光ですが、夏はアウターシェード(下写真・T邸)で遮ることで、室内の温度上昇を抑え、節電効果も期待できます。ちなみに、下写真の右側は室内側から見たアウターシェードの様子。シェードの色により見え方が異なります。通風はやや悪くなります。写真一番下(S邸)は外付けブラインド。ブラインドの羽の角度が変えられます。色展開も。