第2回 可喜くらしレポート。「“共に生きるまちづくり”を鶴川から。悠々園とボランティアセンターがつなぐ地域の輪」@可喜庵/町田市鈴木工務店

9/9(土)に開催した第2回可喜くらし・悠々会理事長陶山愼治さん講演の参加者さん感想をレポートとしてお届けします。

★今回は可喜くらしにご参加いただきました大里真一さんによるレポートをblog編集してお届けします★

尊厳を大切に、自立した生活を送る

悠々会理事長 陶山愼治さん。9/9可喜庵にて

鶴川にある古民家「可喜庵」で、市内有数の高齢者福祉施設である社会福祉法人「悠々会」理事長、陶山愼治(すやましんじ)氏による講演会に参加した。テーマは「“共に生きるまちづくり”を鶴川から 悠々園とボランティアセンターがつなぐ地域の輪」だ。

講演ではこれまで事業に携わってきた中での印象的なエピソードとして、かつて三越百貨店で初のエレベーターガールを務められた(実質的に日本初のエレベーターガール)女性の方が、後年になって悠々園に入所されてきた時の話に触れられた。

当時のエレベーターガールとはアイドルタレント顔負けで、多くの方々がそのエレベーターガールの方々を見るために殺到されたようである。
海外にも報道されるほど、注目を浴びた存在であったという。

入所の際、陶山理事長はその方に、質問された。
「何かできることがあるでしょうか」
初対面での会話であったが、そのご婦人は次のように即答されたという。
「男性の方に排泄処理をしてもらうほど惨めなことはありません、女性らしさを無くしてまで、生きたくはありません」。

陶山氏はその瞬間改めて気づかれたという。
人間は生きるうえで「尊厳」というものがいかに大事な事であるのかを。
「尊厳」が無くなれば、生きる意味がなくなってしまうほどのものなのである。

自立した日常生活とは?

では「自立した日常生活を送る」とは?
人に頼らず生きることが自立ではない。
「生き方を自分で選ぶ、生き方を自分で決める」ことである。
そのうえで、出来ないことはお願いする、出来ることはやってあげるのである。

このような考え方は、社会福祉に関する理念として貫かれている。
「尊厳を大切にして、自立した日常生活を送る」ことが人として何よりも重要なのである。

私は思った。尊厳を踏み躙る行為がいかに人にダメージを与え、人同士を破綻させてしまうか。その事例がこの社会にはいっぱいある。
確かに思い当たることばかりである。
我々はもう一度このような問題に向き合う必要がある、と改めて認識させられた次第である。

人生を振り返って「幸せだった」と思えるように

陶山氏は次にターミナルケア※について述べられた。
ターミナルケアに関わることで、「人が自分の人生を振り返って、幸せだったと思えた」方々には特徴があることに気づいたという。

1.自分の能力を活かして生きる事が出来た。
2.生き方を自分で選んで、決めてきた。
3.最後の日まで期待される役割があった。

人としての尊厳、ターミナルケアを通して窺われる人としての幸せを語られたうえで、陶山氏は社会の現状を検証し、導き出された課題と取り組みを語られた。

尊厳をもって人生を全うできるまちづくりは、地域に住む人すべての課題

尊厳をもって最期を迎えられるか否かは高齢者世代だけが直面する問題ではなく、地域に住むすべての方々が直面する課題であると説く陶山氏の持論に、私は大賛成である。一社会福祉法人である悠々会理事長の陶山氏が、地域の課題、問題意識を強くもって事業やその枠にとらわれない活動に取り組まれている様子に驚きを隠せない。

この日語られた陶山氏の講演内容は、町田市に住む多くの方々に聴いてもらいたいぐらいである。
私のこの投稿で、簡単に紹介できる程度の内容では決してない。
子育て世代のお母さん達、会社勤めの方達、若者達にとっても極めて大切な事ばかりなのである。例えば鶴川地域に住む方々にとって、鶴川駅周辺が抱える課題は生活に直結する事なのだから尚更であろう。

厚生労働省は、社会福祉法人に対して(いや地域社会に対してといったほうが良いほどだが)、地域公益活動の推進を強く求めているとの事だ。

町田市鶴川から~「共に生きるまちづくり」をライフワークに

そうしたなか陶山氏は、「共に生きるまち〈共生社会の必要性〉」をあらゆる諸活動を通して説かれているのである。その中身は地域社会の住民にとって決して人ごとではなく、自分ごとばかりなのである。

町田市鶴川で生まれ育った陶山氏は、ライフワークとして「共に生きる」を目指されている。
「共生社会を小さめのコミュニティでかたちに」「日常において、お互いにリスペクトしながら生活する環境を整える」。
氏の具体的な課題とその対処法はすべて、ドスンと私の腹に伝わってくるものばかりであった。

具体的な取り組みの紹介も。悠々園ボランティアセンターや協力者による移動支援の鶴川CAPは、外出困難な子育て中の親や移動手段をもたない高齢者、障害を持つ方者などに利用されている。ワンコイン食堂もコロナ禍を経て再稼働。今後は日常支援や災害時支援付き住宅の仕組みづくりも考えているとのこと。

その他これから直面する、あるいは既に直面している課題については、「未来と福祉と地域社会づくり」にその多くが網羅されていた。

今回の公演をしてくださった陶山さんに、心から感謝します。
(大里真一)

ご参加いただいた皆さまありがとうございました。(鈴木工務店)
第12/9(土)10:00~12:00開催、3回可喜くらし「岡上のワイナリーからはじまる農・まち・くらし」、スピーカーは農業生産法人カルナエスト・蔵邸ワイナリー山田貢氏。詳細、お問合せはこちらからどうぞ。https://www.suzuki-koumuten.co.jp/event/22089/