住まいのいいね!「お月見」―『マイタウン』バックナンバーNo.707より

京の町屋の中庭には「蹲踞(つくばい)」があります。蹲踞の水面に揺れる空の月と反射する光を愉しむそうです。京都郊外・桂離宮の回遊式庭園には、池を中心に建築群が並び、古書院・二の間の広縁の先に、池に面して竹質子張りのテラス状スペース、観月のための装置「月見台」があります。こうした地にある桂離宮は、観月のための場所と考えられています。

古都鎌倉の北鎌倉から徒歩5分ほどのところには、紫陽花寺で有名な明月院があります。2年前(2013年当時)、寺の向かいの、茅葺の茶室と離れのあるお宅の母屋を建て替えました。家づくりをする上でのご主人の強い要望の一つが、「中秋の名月をじっくりと自宅から鑑賞したい」ということでした。明月院は地形が谷月になっており、月はちょうどその谷間を通り抜けていくそうです。谷戸の濃い緑と空に浮かぶ月だけを鑑賞できるという、自然があつらえた舞台設定。そこで、家の2階に広縁のような空間を設け、月を愛でるための露台(バルコニー)を外に張り出しました。ご主人はここに腰かけ、団子と苦飾りを横に、月を肴に猪口に注がれたおいしいお酒を愉しまれるそうです。
自然の風景に乏しくても、バルコニーや縁側に出て部屋の電気を消し、月明かりの下で一杯はいかがでしょうか。

 

出典:(株)エリアブレイン発行 『マイタウン』No.707 2015年9月1日号より

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この記事の著者

鈴木 亨

会長

鈴木 亨

Suzuki Toru

一級建築士

大学卒業後にイギリス、フランスで約5年間暮らしました。その間、ERNO GOLDFINGER設計事務所、RSRP設計事務所に勤務しました。欧州と日本の二つの原風景から、残したくなる「普通の家」を創るたのしさを知りました。好きな言葉は「桃李不言 下自成蹊」。