伝統堅持VS経費削減

大嘗宮一般参観(12/8まで)に行ってきました。大嘗祭については公費支出や秋篠宮さまのお言葉など、平成時に比べてメディアでより多く取り上げられた印象です。「大嘗宮(だいじょうきゅう)の儀」は毎年行われる新嘗祭(にいなめさい)と同じように五穀豊穣を祈り、東日本から占いで選ばれた栃木県産米を悠紀殿で、西日本から選ばれた京都産米を主基殿で供え、祈り、口にする儀式です。7世紀後半の飛鳥時代にはじまったとされ、嘉永元年(1848)大嘗会図にあるような数棟の建物だけで執り行われていたものと思われます。 図-1嘉永元年大嘗会図

近代以降は明治大嘗宮を経て、大正・昭和に定型化され、令和では、平成に準拠しつつ、建設コストをを抑えるために規模、屋根材や構造材などが見直されました。

図-2平成・令和の比較、変更内容

工事・建物について工務店的視点で紹介します。大小約40棟の建屋から構成され、延床面積は約2600㎡です。その内、約30棟の殿舎は木造建築で1280㎡。使用された木材は約550㎥です。主な木材は、長野県産の唐松皮付丸太、静岡県産の杉皮付丸太、北海道産のヤチダモ皮付丸太で約110㎥になります。静岡の天竜では、末口10cm、長さ4.2mの杉丸太を131本を選木して納めたそうです。意外にも、一般の住宅用としても用いられるようなサイズです。

仮に木材の立米単価を20万円としても木材料費だけで、1.1億円になりますが、一般競争入札で、清水建設が9億5700万円(税込)で落札(予定金額は、14億4千万)しました。利益度外視に意地を感じます。坪単価120万円なので安すぎると思いませんか?最盛期には宮大工120人が集まったようで、この大工不足の折り、大変な事業であったことがわかります。

建築形式は、黒木(皮付)造、掘立柱、切妻・妻入です。実際に訪れてみてシンプルな大小の屋根が連なる姿はとても美しく、透けた日本建築の特性を強く感じることができました。萱葺が板葺に変更されたのには異論もあるようで、平成まで維持されてきた”伝統”のようですが、屋根も含め白く浮かび上がる姿は神秘的で、仮設建築のはかなさも具現化されているようでした。(小栗克巳)

写真1 左:廻立殿 右:主基殿(黒く見える柱、梁は唐松の皮付丸太)