「ふたりの広々リノベ」季刊誌・かきのたねvol.38より

お子さんが独立したご夫婦ふたりの家です。4LDKだった築38年のマンションをフルリノベーション。風通しと日当たりのいい、‘‘木の家’’となりました。

リノベーション見学会が家づくりを後押し

ご夫婦それぞれに仕事をもちながら3人のお子さんを育て上げたMさんご夫婦。子供部屋を確保できる4LDKのマンションに長年暮らしてきましたが、お子さんが独立して夫婦ふたりの生活になったとき、「こんなにたくさんの個室はいらないな」と、マンションリフォームを考えるように。リフォーム会社や鈴木工務店の見学会に参加していたのが今から4年ほど前のことです。
「やるなら間取りも変えたいな、とか、マンションでどこまでできるのかな、工事中引っ越しかぁ、とかいろいろ考えだしたら、途中で躊躇するようになっちゃって。でも、しばらくぶりに鈴木工務店から藤の台団地のリノベーション完成見学会の案内をもらいまして。それまで鈴木さんでは戸建て住宅の見学しか参加していなかったので、実例を見てこれなら大丈夫と思えました」とご主人のYさん。集合住宅でもがらりとプランや雰囲気を変えられることや、木の質感を求められることが分かったといいます。

写真は玄関と書斎の間仕切り壁に設置した飾り棚。小さな焼き物はYさんの作品。日光東照宮・三猿の逆で「見よう・聞こう・言おう」を愛嬌のある表情で。遊び心が伝わってきます

回遊&裏動線のあるワンルームが便利

南面のLDKで存在感を放つのが、カウンターから収納まですべて造作したキッチンです。
「3食家で食べるのだから、やっぱりキッチンが中心の家でよかったなと、実際暮らしてみて思います。近所に住む子供たちも孫を連れてよく集まりますし、皆で何かしら手伝えて便利ですよ」と話す奥様のEさん。以前のキッチンは南北に細長い住戸の中ほどにあり、暗く閉塞感があったので、リノベでは解消したいと明確な要望がありました。ご夫婦でキッチンに立つことも多く、カウンターを中心に回遊できるアイランド型の使い勝手をとくに気に入っています。

この回遊動線ですが、実は寝室と水回りの間にもあるのです。元々は中廊下で、両サイドに個室と水回りを配置したよく見るマンションの間取りでしたが、この廊下をなくしました。各エリアは引き戸の開閉でひと続きにも個室にもなり、洗面・収納を中心に回遊することもできます。
「区切られた完全個室はいらないのですが、夫は早く寝るし、私は遅いので、寝室側と洗面側の2WAYの動線をお願いしました。これもすごく便利」とEさん。畳間の寝室は、昼間は玄関からLDKまでひとつながりの空間として開放していますが、夜は引き戸を閉めて個室化し、代わりに洗面室が裏動線となって玄関とLDKをつなぎます。また、これらの引き戸を開放すると南北に心地よい風が抜け、夏でもエアコンの出番は少なくて済むそうです。

自分に合った収納でストレスフリーに

オープンなワンルーム状の住まいですが、雑多な日用品や書類の数々はほとんど目につきません。すっきり暮らすコツをEさんに伺うと、「物が見えるとストレスに感じる方で、隙間収納グッズとかも好きではないので、扉付きの造作収納がいいなと。それから、私の背丈に合わせて壁面収納は手の届く高さに抑えるなど、これまでの収納習慣を設計に反映してもらいました」と教えてくれました。また、引っ越しの際には断捨離も決行したそう。読書家のお二人はまず蔵書を整理。お子さんが小さい時に描いた作品は、厳選したもののみ手元に残し潔く処分。その代わり、きちんと額に入れてリビングに飾って楽しんでいます。

ご家族が全員集まると14人の大所帯に。ご友人も含めて、以前からよく人が訪ねてくる家だったそうですが、「空間を広く使えるので子供も大人もみな居場所を見つけてくつろいでいますよ。子供たちは、和める、とか、落ち着いているけどオシャレ、とか言ってくれます」と、さらに集まりやすくなった我が家に、ご夫婦は満ち足りた笑顔を見せてくれました。

上記写真:既存アルミサッシの性能を補うために、木製枠の内窓を設置。既存窓との間に空気層をもつハニカムロールスクリーンを挟んで断熱性能を高めています