絶滅危惧種「和室」

新百合ヶ丘エリアのフリーペーパー『MY TOWN 』鈴木亨の連載コラム、バックナンバー2021.6/15号より

築150余年の「可喜庵」

息抜きは畳でゴロゴロ派?

幕末に建てられた可喜庵は15年前まで自宅でした。玄関を入ると大谷石の土間があり暖炉もありました。茅葺屋根の下に和室が4部屋あり畳式の部屋は3部屋。床の間がある奥の部屋は父が使用し、台所続きの茶の間は基本母の部屋でしたが私の居場所でもありました。2階に天井高を抑えた畳の8畳間があり姉たちの部屋だった記憶があります。

在宅勤務が多くなっているようですが、息抜きは畳でゴロゴロ派ですか、それともリクライニングチェアでコーヒーを一杯派ですか。横になりたい気分ですが板の間は敬遠しますよね。小さい時分、畳にゴロンと寝っ転がって遊んでいました。母から「埃を落とした」と必ず一言あった記憶があります。

「可喜庵」外観

現在見る和室の原型

京都東山に足利義政が造営した慈照寺に銀閣と共に書院造りの「東求堂」があります。違棚や付書院は装飾が施されたものでなく、のちの和室はこれに倣ったといってもいい程、現在見る和室の姿です。清々しい簡潔の美に日本人の心の故郷を感じます。

「東求堂」外観。書院造の室内は検索してみてください

30年ほど前までの旧家では、最も良い場所に床柱、床脇、付書院、長押とフル装備の二間続きのお座敷が当然でしたし、家には床の間付の和室がありました。しかし、ひとつ、また一つと構成要素が剥ぎ取られ、多くの家から和室は消えてしまいました。

以前手掛けた茶室

多目的に使える現代の和室

現在の我が家には障子と畳の和室があり、洗濯物の整理とアイロン掛けをしたり、妻の趣味部屋になったり。また、寝転んでストレッチや一休みといろいろと使い勝手があり重宝しています。リビングの一隅に畳を敷いて和室風を残す努力が必要です。

自宅の和室