町田市から発信--設計施工の工務店がつくる注文住宅とは?

工務店、ハウスメーカー、建築設計事務所--つくり手いろいろ、注文住宅

工務店、ハウスメーカー、建築設計事務所など、注文住宅のつくり手はいろいろありますよね。都心のベッドタウンでもあり人口43万人都市の町田市では、さまざまなつくり手による住宅が建ち並んでいます。鈴木工務店のような設計施工の工務店がつくる注文住宅は、メーカーなどに比べればそう数が多いわけではないですが、家づくりは特徴があります。今回はその特徴をお伝えします。

川崎市高津区の2棟の住宅。庭をシェアするように姉妹夫婦の家を配置しました。不整形地における土地の生かし方を、まず配置で示した事例です。works事例ページはこちら

町田市の鈴木工務店にみる--「設計施工の工務店」とは

お客様には「一級建築士事務所と大工を擁する工務店が一緒になったつくり手です」とお伝えします。規格住宅をつくる(売る)工務店も多いなか、鈴木工務店は一棟一棟、住まい手と敷地、予算にあわせて一から設計していきます。単体での建築士事務所と違う点は、「木を知る」度合でしょうか。鈴木工務店の設計士は、木材の特徴や木取りを理解し、合理的な用い方や寸法取り、構造を考えて設計しています。また、大工も図面を読み、曖昧なところがないように、現場でも納得がいくまで設計と確認しながら工事を進めます。

どんなに意匠的に斬新でも、木材を使う上での合理性に欠けていれば、手間もコストもかかり、結果的には住まい手の負担となります。「(たとえ非合理でも?)〇〇建築家の作品に住みたい!」という場合は別として、合理的で無駄の少ない設計提案は住まい手のメリットになります。もちろん合理性だけではなく、家づくりは楽しんでこそ。そのためのヒアリングシート「設計カード」には、思いのたけを存分に書き込んでください。それをベースに設計士と打ち合わせを重ねていきます。

町田市を中心に家づくりを展開・鈴木工務店が提案する「工務店の注文住宅」の特徴を知ろう

「まじめな工務店」と聞いてイメージするのは何ですか?昔ながらの大工が墨付け刻みをする工務店でしょうか。地域の御用聞きのような馴染の存在でしょうか。私たちは日々の家づくりはもちろん、セミナーや勉強会でも住宅建築の研鑽を積んでいます。主には住宅性能についての探求と設計力の向上です。今回は、このふたつの特徴について紹介します。

ちなみに、住宅性能も設計力(提案)も気候や文化、生活様式など地域特性を考慮したものであることが求められます。鈴木工務店は町田市能ヶ谷の地で代々工務店業を営み、地域に根差した家づくりで、施工エリアの気候風土、地理などに明るいことも特徴です。例えば、関東において断熱・気密性能などの数値だけを追い求めてしまうと、コストに際限がないのなら別ですが、オーバースペックに陥る結果に。鈴木工務店では、全体のコストバランスを見て、地域特性に合った提案を行います。なお、主な施工エリアは会社のある町田市能ヶ谷から車で約1時間圏内としています。迅速なアフターサポートのためのエリア設定です。

1)工務店だから叶えられる住宅性能

①温熱環境をデザインする

広袴の住宅(OMX)。吹抜けを介して上下階で空気が動き、家中の温熱環境をほぼ均一に保ちます。works事例ページはこちら

「冬暖かく、夏涼しい家」は省エネルギーで光熱費を抑制してくれます。そしてなにより心地いい!住宅内でヒートショックのない環境は健康寿命も伸ばしてくれます。その基盤になるのが、住まいの気密・断熱そして換気です。基本は関東の気候や暮らしに合わせた気密断熱性能を担保すること。また、条件や要望に合わせて工法や断熱材を選択しています。例えば、防火、準防火等の規制に合わせた下地、仕上げとの関係性や、防音を重視したい場合などの提案がそれにあたります。

もちろん、断熱材を付加したりトリプルガラス等を用いてさらに性能を上げることはできますが、居住地域の気候や暮らし方、コストバランスを考えてオーバースペックに陥らないよう計画していきます。よくお客様には、「断熱性能だけではしあわせに暮らせないですよね」と話しています。なにごとも、バランスが大事です。ちなみに、鈴木工務店の家はHEAT20 G2レベルを標準的にクリアしています。

三輪緑山の住宅。北窓からけやき並木を望む敷地。ダイニング脇の吹抜けに面した北窓ガラスには、さらなる断熱性を求めてトリプルガラスを採用しました。事例ページはこちら

住宅の気密性が上がれば、換気の重要度も上がります。2時間で家全体の空気を入れ替える建築基準法を、数値計画上でクリアするのは容易ですが、実際に空気の通り道を計画するのは目に見えない分難しいもの。気密があまいと隙間と換気扇の間だけで空気が動く事態に。結果として、空気が停滞している場所ができ、そこに水分の発生源が近ければ(サッシや水まわりの近く)結露が生じてしまいます。

気密・断熱・換気はセットで考えることの重要性は、家づくりのオンラインセミナー(毎月第3土曜日開催)で解説していますので、ぜひご参加ください。ちなみに、鈴木工務店の家のC値(相当隙間面積)は1.0センチ平方メートル以下です。平成11年制定の省エネ基準では5cm平方メートル/1平方メートル(※5地域まで設定あり。東京は6地域のためこの時点でも推奨に留まる)でしたが、平成25年の改正時には項目ごと削除されています。気密性能を上げにくいハウスメーカーへの配慮など、いろいろな事が言われていますが真実は如何に。実際、プレハブ鉄骨造がメインのメーカー住宅は気密が取りにくく、C値の測定自体個別に行ってはいないようです。

➁住宅性能表示制度に新設される上位等級をすでにクリア

2022年度からは住宅性能表示制度に上位等級が新設されます。昨年度までは断熱等級1~4だったところ、2022年4月から5等級(ZEH基準相当)が施行され、10月からは等級6(HEAT20 G2レベル)、等級7(G3レベル)が施行される予定です。鈴木工務店や以前から温熱環境の向上に取り組んでいた工務店の家づくりでは、既に等級5以上をクリアしているところが多いので、施行後も実績をもって対応できます。むしろ、見えない空気の流れ、温熱環境をデザインする力を養ってきた工務店の強みを認知してもらえる状況になってきた、ということでしょうか。
※これまで長期優良住宅は等級4でしたが、2022年度4月からは等級5が必要

③住宅性能を支える工務店の施工力

現場見学会では現場監督がお話します

断熱や気密、換気の性能を設計通り実現できるか否かは、最終的には施工にかかってきます。設計者だけでなく、大工をはじめとした現場の施工者がその重要性や手順を理解していること。断熱だけで完結するわけではなく、気密シートやテープが手順どおり施されていること。電気関係の配線やコンセントBOX、給排水や換気のダクトなどなど、すき間や貫通部の手当てが漏れなくなされていること。現場に入る職人皆が心がけて実行することで全体としての住宅性能が上がるのです。逆に言えば、誰かが見落としたり手を抜いたりしたら台無しの世界。ここでも、設計施工の工務店だからこそ、現場を統括する現場監督の目を光らせることができるのです。

2)工務店が設計力で提案するもの

①伝える、気づき合うコミュニケーション

住まい手の要望を引き出すコミュニケーション力も含めた設計力は一朝一夕には成りません。日々社内で高めるスキルとなります。一例ですが、鈴木工務店では社内プレゼンを行ったり、プレゼン内容に対して社内で講評を行ったりすることで設計担当のスキル向上を図っています。

また、住まい手の要望を引き出すステップを“ be spoken ”として大事にしています。住まい手の潜在的な要望を引き出し、つくり手と共に気づき合う工程です。まずは計画初期にお渡しする「設計カード」に存分に要望を書き込んでもらいます。その後に住まいへインタビューへ赴き、実際の暮らしや物の量などを確認するステップを踏み、ファーストプレゼンテーションへと進みます。ちょっと遠回りに感じるかもしれませんが、住む人にフィットする無二の家づくりのための大事な工程です。

➁自然の力を活用するパッシブデザイン

戸塚の住宅(OMX)。冬至の頃は室内の奥まで日が差し込みます。夏は、パーゴラやすだれなどで遮熱。こちらの住宅では2階バルコニーが庇の役割を果たし、夏の日射を遮ります。事例ページはこちら

1)で紹介した温熱環境のデザインに加えて、太陽の光や熱、風を取り入れるパッシブデザインも大事にしています。基本は、冬は太陽熱を存分に取り込んで住宅内に蓄熱し、夏は遮熱して室内の熱は外へ逃がすこと。そのうえで、アクティブな空調設備の選択としてOMXやダクト式エアコンを提案しています。

アクティブな選択肢や手法は工務店により様々です。鈴木工務店では、冬は太陽の熱(またはエアコンの暖気)を床下へ送り込む床下暖房で、基礎から上下階を暖めています。夏はエアコンの冷気を(吹抜けを介して)上階から降らせ、個室へはダクトで届ける仕組みです。ちなみに、太陽の熱を利用するOMXは1台4役(床下暖房、冷暖房、熱交換換気、排熱利用の給湯)+太陽光発です。ダクト式エアコンも基本はホームエアコン1台で家全体をまかないます。

③敷地を読み解きプランに反映する

相原の住宅。高台の住宅地から眼下には街並みを、遠くには丹沢山系を望みます。事例ページはこちら

日照条件や通風はもちろん、室内から見える景色も想定してプランニングを行います。たとえ隣家が迫る住宅街の中でも、景色を切り取ることはできます。同時に、外からの視線をコントロールする外構計画もセットで提案します。窓からの景色をたのしみ、街並みの景色もつくるような緑と外観をもつ住まいです。

工務店の多くは地元に根差していて、施工エリアを限っていることが多いです。鈴木工務店も会社から車で1時間圏内が基本です。そのため、エリア内の土地勘や気候風土に明るいのも強みです。土地探しからのお客様には、土地の下見とアドバイスのサポートも行っています。

④工務店の注文住宅は建築費用もオーダーメイド

根岸の住宅。住まい手の要望で薪ストーブを設置しています。事例ページはこちら

設計提案ではヒアリングに十分な時間をかけて、住まい手が迷子になれば時にコンサルのように選択肢を提示し解決へ導くことも多々あります。そうした家づくりは規模の大小を問わず同じ姿勢で取り組みます。必然的に、住まい手と敷地に合わせた十人十色の住宅となるため、坪単価等で建築費の平均を割り出すことはありません。その代わり、設計内容に沿って一つひとつ積算し詳細を提示していきます。付帯工事(空調工事や外構、宅外インフラ等)も含め、住むために必要な総工事費を提示するので、いわゆるオプションという発想自体がありません。一方で、設計打ち合わせを通して細部にわたり確認していく作業にはある程度時間を要します。長丁場を乗り切る信頼関係の構築がとても重要になるのです。

〇まとめ

温熱や耐震(等級3を確保)の計算と全体計画、それを実現できる施工力があること。設計力では、敷地を読み解く力と、be spoken を反映した住まい手にとっての使い勝手、快適さを提案できること。加えて、冒頭「設計施工の工務店とは」で触れた、「木を知る」からこその木の使い方やデザインで豊かな空間を生み出せることも重要です。モデルハウス「家の展示館」や完成見学会で、実際の空間と温熱環境をぜひ体感してみてください。

5/7(土)8(日)建物完成見学会「暮らしを紡ぐ」@世田谷区祖師谷を開催します。詳しくはこちらのイベントサイトをご覧ください