SUZUKIのリノベーション3-暮らしを考える・CASE1戸建て実例

杉の床は肌触りがあたたか。左手の間仕切り兼收納BOXの一部にデスクスペースを設けて居場所をつくりました

3--リノベーション実例から、暮らしを考えてみよう・CASE1戸建て実例

SUZUKIのリノベーション1~3(はこちら)の最終回では、住まい手が叶えたかった暮らしに注目しながら実例を紹介します。

「大人家族の戸建てフルリノベーション」

築42年木造2階建延床面積約26坪の家をスケルトンリノベーションしました。耐震、温熱環境はインスペクションを行って計画しています。そして、ご夫妻と成人した子供2人、時折訪問されるお母さんの5人が夏涼しく、冬暖かく暮らせる家を目指しました。

1階は收納兼間仕切りBOXを中心に回遊できます。ダイニングの奥は、引き込みの障子を閉めると個室化でき、お母様訪問時の宿泊室に。普段は、表と居室の緩衝地帯になる縁側的な存在です

ご家族が住んでいた家の隣に、しばらく空家状態だったご主人の実家がありました。どちらも延床面積26坪ほど。共に北側道路に面するため、両方の建物をインスペクションして判断材料に。結果、築年数の割に比較的状態もよく、住宅街の辻に面した立地環境が自宅よりもよいと判断された実家をリノベーションすることになりました。

●リノベーションを決断するまでのポイントは--インスペクションの実施と結果の精査。現状の立地環境をあわせて考えたこと

当初、建替えも選択肢に挙がりましたが、解体や基礎工事などの手間とコストが節約できること、建物の状態が改修に耐えられることが分かりフルリノベーションを選択されています。ちなみに、実家は基礎や土台の乾燥が保たれ比較的状態がよく、屋根は吹き替えてから数年程度でそのまま使える状態でした。

間仕切り兼收納BOXのキッチン側は、調理機器や食器、冷蔵庫が収まります。奥に見えるはダイニング

キッチンの奥には造作棚を充実させたパントリーを用意。多忙でもしっかりおうちごはんを楽しむご家族ならではの收納です

リノベーションをする建物が決まったら、次はご家族の住まい、暮らしの要望を設計提案でカタチにしていきます。

●満足できるリノベーションのポイントは--暮らしを考える&要望→整理・提案(を受ける)→そして決断

住まい手からは、これまでの生活で不便だったこと、解消したいこと、これから叶えたいことを思いつく限りアウトプットしてもらいます。収納不足、寒さ、結露、狭さなどなど、いろいろ出てきます。それを交通整理するのは鈴木工務店の設計士の仕事です。ただ要望を聞くだけではなく、なぜ「そうしたい」のかを掘り下げてインタビューします。そうすると、家を広くして家族皆で集いたいわけではなく、大人それぞれが程よい距離感で心地よく過ごせる空間を求めていること、一人ひとりの空間は広くなくてもいいことなどが見えてきました。

結果、設計からは3つのポイントを中心にプラン提案をしています。

「室内寒暖差の解消/断熱・気密性能の向上」

「空間の有効活用で各人の居場所を確保」

「10㎡の増築と収納兼間仕切り家具が生む回遊動線、使い勝手の向上」

※「設計レポート」、いえづくりblog「インスペクションで理にかなったリノベーションを「小さな家のセカンドステージ」もあわせてご覧下さい

間仕切り兼收納BOXの玄関側。大きなクロークがあり、その奥にデスクスペースが続きます。奥はリビング・ダイニング

2階の階段ホールに強要の大型收納を用意。もとから床レベルも天井高さも低かった奥の2部屋は、天井を撤去して梁を現しにしています

床と天井のレベルは既存のまま。4畳弱の居室ですが、梁を現しにして、古材の雰囲気と縦方向への空間の広がりを求めました

次は、設計提案を受けた住まい手の番です。すでにそれぞれの生活ペースができあがっている大人家族でしたから、あれもこれもと悩むより、提案に自らの暮らしを照らし合わせて判断されました。

「温熱環境向上など建築設備に関わる部分はプロに任せる」

「収納量や水回りの使い勝手については要望が反映されているかをしっかりチェック」

「空間の居心地については、3Dパースや動画を使ったシミュレーションで判断。照明計画も含めて迷ったら設計士に任せる」

という姿勢です。自ら「決める」こともプロに「任せる」ということも、直面すると難しく感じるかもしれません。打ち合わせを通しての信頼関係が重要になってきますが、何より、はじめに物理的な要望だけではなく、リノベーション後の暮らしについて、住まい手と設計士が一緒に掘り下げて考えたことが奏功しているのです。

 

北西道路に面した角地に建ちます。人目につくため、外観の上半分を杉板張りに。板張りに自然由来の塗布剤を浸透させ耐久性を高めています。塗膜をつくらないため塗り直しの必要がなくメンテナンス性が高くなります

2020年1月に竣工、ご入居されました。一年で一番寒い時期でしたので、居室も水まわりも家中がムラなく暖かい温熱環境を実感された様子です。ここでは、小屋裏空間を利用して高効率ヒートポンプエアコンを設置。ダクトをまわして上下階、各室を冷暖房する仕組みを採用しています。

プランはもとより、温熱環境向上のための提案は、建物の状況、家族のライフスタイルによって異なります。今回のご紹介事例のほかにも、戸建て住宅の1階のみをスケルトンにして断熱改修するメリハリの効いたリノベーション実例もあります。各事例は、Worksからもご覧になれます。